漢方の診察をするときには必ずお腹をみます。多かれ少なかれ大概の人のお腹にはガスが滞っています。胃のあたりを軽くたたくと、ポンポンと太鼓をたたくようないい音がします。「ガスが溜まっていますね」といっても、ほとんどの人は自覚がありません。漢方薬に比べると鍼灸治療は速効性があるのでガスを散らす治療をすると、「ああお腹がすいた」とか「胸元が楽になった」とかおっしゃって、はじめてガスが滞っていたのがわかります。また女性はウエストが細くなったと喜ばれます。
このガスは漢方では気滞とか肝気鬱結などと表現しますが、主にストレスによって生じるものです。肩・背中・腰を圧迫して凝りとなり、上を圧迫して動悸・胸苦しさ・ノドのつかえ感などをおこし、下を圧迫して下半身の血行不良や婦人病などの種々の病態の原因となります。気を病む、気のせい、とかいう表現はまさにこのガスなのです。
漢方薬では気剤といって香りのよい生薬を治療に使います。ミカンの皮、紫蘇の葉なども身近な気剤です。しかしミカンの皮だけを煎じて飲んだからといってガスが除かれるわけではありません。患者さん個人の症状と体質に合わせて、いろいろな生薬を組んで漢方薬を飲んで効果がでるのです。
気分がすぐれない方、ストレスを感じる方、気剤の入った漢方薬を飲んでみませんか?