心とからだ

 少し以前の西洋医学では、心とからだはまったく別のものである、という二元論が支配していたので、不定愁訴などは「気のせい」「たるんでいるから」「もっと積極的に」とか、まったく役に立たないアドバイスがかえって患者さんを苦しめていた状態でした。東洋においては昔から、心とからだは一つとして考えていましたのでいろいろな治療法や養生法もあります。

 最近引きこもりや家庭内暴力などの相談をよくうけますが、若い女性が多いです。お腹がはる・ノドのつまった感じ・胸の圧迫感・イライラして自制できない・動悸・疲労感・不眠・肩こり・腹痛・お腹がごろごろと鳴る・そばに人がいると気になってしかたがない、などと症状は多彩です。いままでどこの病院にいっても異常なしといわれ、本人も家族も大変な苦しみのようです。患者さんには、何事にも几帳面で手がぬけない、いつも緊張していてリラックスできない、またリラックスのしかたを知らない、といったことが共通点として感じられます。

  治療は鍼灸を全身に行いますが、特に肩や背中の凝りをとり、腹部のガスを動かすようにします。漢方薬は気剤といって、お腹のガスを除くようなものを使います。また患者さんに毎日温灸をしてもらいます。治療をするとお腹がすいて心地よい疲労感がでます。  

 養生としては、毎日お風呂にゆったりとつかりシャワーだけですまさないこと。お酒の飲める人は少しばかりの晩酌もいいでしょう。そして夜に緊張するようなことをしない、ということです。サラリーマンの方が仕事が終わった後に赤提灯に行くのも、仕事中のストレスモードからリラックスモードに切り替えるためです。また休日にだらしなくごろごろとしているのは普段の激務を開放する大事な養生法です。