漢方の副作用?

 漢方薬服薬中に下痢・皮膚炎の悪化・子宮出血・頻尿などの予想外の症状がでることがあります。子宮出血などは重病の恐れもあるのでもちろん検査をしてもらいますが、いままでの患者さんでは異常があった人は一人もいません。漢方ではこの予期せぬ副作用を瞑眩(めんげん)と呼んでいますが、薬が急に効いたために起こる一種の解毒作用でしょう。体内の渋滞しているものが急激に排出される現象です。一二日から一週間以内におさまり、その後は症状改善も著しいです。漢方家は薬が当たったと喜びますが患者さんには迷惑な現象ですね。

 この瞑眩とは異なる副作用もあります。これは厳密には副作用というよりも誤治というほうが適切で、薬の出し間違いですね。例えば八味丸という有名な薬がありますが、胃腸の弱い人が服用すると、吐き気や下痢が起こります。診察の際にお腹をさわっていれば間違って出すことはありません。また伝統的な診察をせずに病名だけで漢方薬を使うと副作用が起こることもあります。肝炎という病名に小柴胡湯をだして間質性肺炎になったというのもこの例です。本来ならもっと別の薬を使うべきであった、という考証がその後多く発表されています。

 ただ最近は身近なものにも過敏な反応をする患者さんも激増しています。紫雲膏の材料であるゴマ油に反応して皮膚炎を起こす例や漢方薬の原料であるシナモンに過敏症状を起こす例も報告されていますので、何か変わった症状があればお知らせください。

 また最近新聞を賑わした痩せ薬なるもの。これは漢方の名をかたっていますが、似て非なるものです。中国の薬には漢方薬として販売されているものにもステロイドホルモンなどの新薬を入れてあるものも結構あります。ですから個人購入しての服用もさけたほうが賢明でしょう。 

 いっぽう良い副作用もよくあります。腰痛の患者さんの髪の毛が黒々としてきたとか、婦人病の治療をしている方は肌がきれいになりますし、ニキビの治療では生理痛が治り冷え性も治った、などです。これは漢方薬は局所、例えば胃だけに合わすとか、ニキビだけに合わすといったことができないのです。婦人病であろうと、肝臓病であろうと結局全体を診て合わすので、患者さんの主訴だけでなく、いろいろなところに効いてくるわけです。

 ですから電話相談で病名だけで漢方薬を出すところとか、患者さん個人を診察せずに漢方薬を出しているところには気をつけなければなりません。